2011年09月21日

iPS臨床応用へ前進、がん抑制、特許取得も次々

 体の様々な細胞に成長する能力を持つiPS細胞(新型万能細胞)を作製したと、京都大学の山中伸弥教授らが世界で初めて発表してから約5年。2006年8月にマウスの細胞で成功し、翌年11月にはヒトの細胞でも実現した。新薬や再生医療への応用が期待され研究競争が激化するなか、日米欧などで基盤特許も取得した。山中教授はいま、ノーベル賞に最も近い日本人といわれている。
 “魔法の遺伝子”――。今年6月、京大で開いた記者会見で、山中教授は新発見の遺伝子「Glis1(グリスワン)」をこう表現した。iPS細胞を医療応用する際に最大の懸案とされる発がんの危険性を、この遺伝子を使えば大幅に低減できるという。

 iPS細胞は皮膚細胞などを時計の針を巻き戻すようにして、体の様々な細胞になる前の状態にしたものだ。再び時計を進めて、欲しい細胞を作れる。既に心筋や神経、網膜などの細胞の作製に日本を含む多くの国の研究者が成功している。

 山中教授らが06年に発表したiPS細胞は、マウスの皮膚の細胞に「山中因子」と呼ばれる4個の遺伝子を組み入れて作製した。だが、そのうちの1個はがんとの関連が指摘され、できたiPS細胞を様々な細胞に成長させる過程でがんが発生することがあった。

 この遺伝子なしにiPS細胞を作ることにも成功したが、それでもがんのリスクは残る。iPS細胞を作るときに不完全な細胞が生じてしまい、がんのもとになっていると考えられている。

 山中教授らは発見したGlis1を、山中因子と一緒に皮膚の細胞に入れて調べた。不完全な細胞が死滅し、完全なiPS細胞の作製効率は4倍以上に向上した。山中教授は普段、患者に過度の期待を抱かせまいと慎重な発言が多いが、Glis1の記者会見では「臨床応用に大きく前進した」と手応えを語った。

 この5年間で、iPS細胞は治療に使う移植用材料の研究や新薬の開発、難病の解明などに幅広く使われるようになり国際競争が激しい。このため、山中教授と京大はiPS細胞に関する特許の取得に尽力。京大は今年7月に欧州で、8月には米国でそれぞれ作製技術に関する重要な特許を取得したと発表した。

 既に日本をはじめ、ロシアなど旧ソ連9カ国で効力を持つユーラシア特許のほか、南アフリカ共和国、ニュージーランド、イスラエルなどでも特許を取得済み。加えて世界最大の医薬品市場がある米国や先端医療研究が活発な欧州で取得できた意味は大きい。

 有力な特許は日本の新薬開発や再生医療の研究を後押しし、iPS細胞技術の実用化に役立つ。研究者が多く資金も豊富な米国はiPS細胞関連の研究を猛烈な勢いで進め、特許取得に積極的。日本の特許庁の調査によると、04〜08年に国際出願されたiPS細胞関連特許の約半数は米国の企業や大学によるものだ。

 仮に米国の企業1社に有力特許を握られれば、iPS細胞は日本発の大成果であるにもかかわらず日本の研究が制約を受けかねない。日本の患者が新薬や治療に高額な支払いを迫られる懸念がある。京大は取得した特許の使用権を広く供与しようと考えている。

 これまでのところ、iPS細胞による患者の治療は始まっていない。だが、整形外科医出身の山中教授は「患者に役立ちたいという思いを常にずっと抱いている」。様々な分野の医師や専門家と協力して、3年後をメドに一部の病気で臨床応用に踏み切りたい考えだ。

 iPS細胞の学術的な意義も大きい。1個の受精卵が何度も分裂し皮膚や心臓、骨など体を構成する多様な細胞・組織に成長して個体ができる。山中教授はこの発生のプロセスを逆転させ、皮膚の細胞から受精卵のような、あらゆる細胞に成長する能力(万能性)を持つiPS細胞を作ってみせた。発生の仕組みの解明へ前進した。
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2010年03月15日

iPS細胞、がん治療への応用研究が加速 東大や理研

 新型万能細胞(iPS細胞)をがんの治療に応用する研究が活発化してきた。東京大学はがん患者の弱った免疫細胞からiPS細胞を作って増やし、再び免疫細胞に育てて患者に戻しがんを攻撃させる研究を進める。理化学研究所もiPS細胞から作った免疫細胞の働きを動物実験で確かめる。大阪大学はがん細胞をiPS細胞に変え、腫瘍(しゅよう)化を防ぐ研究に取り組む。

 東京大学の中内啓光教授と金子新助教らは血液中の免疫細胞の中核をなす「T細胞」を健康な人から採り、3〜4個の遺伝子を入れてiPS細胞を作製。これにたんぱく質などを加え、再びT細胞を作ることに成功した。がん細胞を攻撃する働きに関連した遺伝子も、元の細胞と同じであることを確認した。
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2010年03月07日

若い女性襲う「子宮けいがん」の予防策は?

3月5日放映の特報首都圏で「子宮けいがん」の予防のことが述べられていた。早く手を打つべきだと考える。

子宮の入り口に発症する、子宮頸(けい)がんは、年間1万5千人がかかっていると言われ、日本では1日10人が子宮頸がんで死亡しており、中でもも30代女性の患者数は最近10年間で倍増しています。
人気歌手だったZARDの坂井泉水さんも子宮頸がんが原因で亡くなりました。

子宮がんは子宮の奥にできる子宮体がんと子宮の入り口にできる子宮頸がんの2種類がありますが、子宮頸がんは性交渉によりヒトパピローマウイルス(HPV)に感染することで発症し、特に若い女性は子宮頸がんの進行が早く、欧米では「マザーキラー」と呼ばれるほど重症化して命を落とす危険が高く、手術では、子宮を摘出しなければならないなど「心の傷」も多く負うことになります。

今回の特報首都圏では、娘を子宮頸がんで亡くした米山節子さん(東京都北区在住)が紹介されましたが、娘の朋恵さん(当時27歳)は結婚したばかりで、結婚前に子宮頸がん検診を受けており、その時は陰性だったものの、5か月後に不正出血があり、仕事が忙しく病院に行けないまま数か月が経過し、病院に行った時には、がんが全身に転移して子宮を摘出しなければならないほどの重症で、余命数か月と診断されたとのことです。

また、今回の特報首都圏で紹介されたもう一人の女性(32歳)は子宮頸がんの手術は成功したものの、卵巣を摘出した影響で頭痛・めまいなど更年期障害と同様の後遺症が出て、薬を今後40年間にわたり飲む必要があるとのことでした。その女性は「未婚」「子どもを産めない」「お腹の傷」「仕事もできない」悩みを抱え、子宮頸がんに対する偏見をなくそうと子宮頸がんに対する啓蒙活動を行っています。

子宮頸がんの予防はワクチン接種が有効とされており、今回の特報首都圏では、東京都品川区の小児科クリニック(鴻田次章医師)でワクチン接種を行う親子の様子が放映されましたが、子宮頸がんのワクチン接種は保険適用がなく、全額自己負担のため、半年間で2回ワクチン接種を行い、ワクチン接種3回で6万円と費用が大変高く、このクリニックで子宮頸がんのワクチン接種を行った人は15人だけでした。

子宮頸がんは女性なら誰でも感染するリスクがあるにもかかわらず、子宮頸がん検診の受診率が欧米が80%前後に対し日本は24.5%と低く、子宮頸がんのワクチン接種も全額自己負担で昨年末に開始されたばかりで、今回の特報首都圏に出演した宮城悦子医師は「子宮頸がんのワクチン接種は初婚前の11歳〜14歳の時期が効果があり、国は方針を打ち出すべきで、子宮頸がん検診は最低でも2年に1回受診してほしい」とコメントしていました。
※子宮頸がんのワクチン接種はオーストラリアやイギリスなどでは無料
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2010年03月06日

重粒子線を利用した先端がん治療、海外に!

最近の重粒子線によるがん治療技術はほんとうにすごい。

文部科学省は日本が先行するがんの放射線治療法「重粒子線がん治療」の世界各国への普及に力を入れる。5000例超の治療実績を持つ同省所管の放射線医学総合研究所(千葉市)が3日にサウジアラビアの研究機関と協力協定を締結。年内に中国、フランス、ドイツの機関とも結びノウハウを供与する。日本発の医療技術で国際貢献をめざすとともに、先端機器の市場拡大と競争力向上につなげる。

重粒子線治療技術の普及推進は政府が「ライフ・イノベーション」を戦略分野の一つに掲げる新成長戦略にも沿う。同技術は放射線の一種、重粒子線を体外から当ててがん患部を狙い撃ちする。無痛なほか手術が不要で副作用が少ない。手術の難しい脳腫瘍(しゅよう)や従来のエックス線では治しづらい体の奥のがんの治療に効果的とされる。
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2009年12月10日

阪大、がん抑制遺伝子活発化 − iPS細胞を応用

 大阪大の研究チームは12月9日、がん細胞をiPS細胞に変化させたところ、もともと持っていた「がん抑制遺伝子」の働きが強まることを実験で突き止めた。

山中京大教授の手法を応用したもので、細胞はがんの悪性度がほぼゼロになり普通の正常な細胞と同様の性質になった。研究が進めば、転移がんの働きを抑える新たな治療法の道をひらくと期待されている。

 阪大の森正樹教授と大学院生の三吉範克さんらの成果で、米科学アカデミー紀要(電子版)に発表する。

 あらゆる細胞に成長できるiPS細胞は、皮膚など体の正常な細胞に3〜4個の遺伝子を組み入れて作る。山中京大教授が2006年に開発した。

 阪大チームは山中京大教授の手法に従い、iPS細胞作りに使う遺伝子4個を、ヒトの大腸や肝臓、膵臓(すいぞう)などのがん細胞に組み入れた。できたiPS細胞は、通常のiPS細胞と同様に神経や脂肪の細胞などに成長する能力を備えていた。
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2009年12月09日

武田、5年ぶり国内新薬 − 抗がん剤など3種、来年度に集中投入

 武田薬品工業は2010年度に3種類の医療用医薬品を国内で発売する。糖尿病薬と抗がん剤、不眠症治療薬で、同社では5年ぶりの国内向け新薬となる。自社開発品と米国の製薬大手からの導入品、買収企業の新薬候補の3種類をそれぞれ10年度中に集中的に投入し、主力薬の特許が今後数年間で切れることに伴う売り上げ減少の影響を抑える狙いだ。

 長谷川閑史社長が8日、日本経済新聞記者と会い来年度の新薬投入方針を明らかにした。すべて厚生労働省に製造販売承認を申請中で、承認を取得した後に発売する。
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2009年11月20日

血液検査でがん検出=遺伝子の状態変化解析−来年の実用化目指す・金沢大

 金沢大の研究グループは、19日、血液検査で消化器がんを検出する新たな方法を開発したらしい。血液中のがん細胞由来の物質「腫瘍(しゅよう)マーカー」を調べる現在の検査と比べ発見率が高く、PET(陽電子断層撮影)などの画像診断よりも手軽に検査できるメリットがあるという。
 同グループは、体内にがん細胞があると血液に異常が起きることに着眼。消化器がんの患者と健康な人の血液遺伝子を比較し、異なった状態に変化している約1000個の遺伝子を突き止めた。
 検査では、2.5ccの血液を薬品処理し、特殊なチップに垂らして、各遺伝子の状態を調べる。消化器がんの患者40人を含む53人に検査を行ったところ、約90%の確率でがんの有無を判別できた。発見が特に難しいとされるすい臓がんも、高確率で判別できたという。
 腫瘍マーカーでは早期がんが見つかりにくく、発見率は2〜5割程度と低い。また、画像診断は発見率は高いものの、検査費用が高く大掛かりな設備が必要な上、目視で診断するため医師の技量によって精度がばらつきがちだった。
 同大の金子周一医学類長は、「少量の採血で簡単に検査できるので、早期発見・治療に役立つ。1万円以下で検査できるようにして、日本のがん検診受診率向上に貢献したい」としている。
 同大は特許を出願しており、石川県野々市町の医薬品製造業者とライセンス契約を締結。今後、より多くの患者サンプルを収集するとともに、肺がんなど消化器以外のがんへの応用を検討する。来年12月には自費診療として実用化したいとしている。
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2009年11月19日

武田薬品 大腸がん用、抗体医薬品を国内販売

 製薬大手が買収した欧米企業の技術を生かし、がん治療に使う抗体医薬品を相次ぎ発売する。武田薬品工業は米国の製薬大手から導入した大腸がん治療薬を2010年春にも日本で売り出す。エーザイは米ベンチャー製の卵巣がん薬の販売許可を12年度に米欧で申請する方針だ。欧米の製薬大手に比べ遅れている抗体医薬品で巻き返しを狙う。
 武田薬品の大腸がん治療薬は米アムジェンの日本法人を08年に買収した際にライセンス導入した新薬候補。厚生労働省に製造販売承認を申請中で10年4月の承認取得を見込む。年間売り上げ目標は検討中だが100億円程度とみられる。このほか、がん抗体薬2種類の臨床試験(治験)も国内で実施中。対象となるがんの具体的な種類は治験データを基に決め、早期の製品化を目指す。
ラベル:抗体医薬品
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2009年10月02日

放射線治療 新装置、照射面積8倍 岐阜大、国内で初の導入

岐阜大学は医学部付属病院に12月、がんの新型放射線治療装置「ノバリスTX」を導入する。従来機種と比べ照射面積が8倍に広がる上、病変部を3D(3次元)画像として取り込んでより正確な位置決めができるのが特長。患者の負担軽減につながるとみている。同装置の導入は全国で初めてという。
<日経産業新聞 10面>
ラベル:放射線治療
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2009年09月29日

富士フイルムと国立がんセンター東病院、大腸がん患部を高精度撮影

 富士フイルムは国立がんセンター東病院(千葉県柏市)と共同で、高精度で大腸がんの患部を3次元撮影する技術を開発した。内視鏡で取り出した患部の内部を、近赤外線を使って細胞レベルの高精細画像に映し出して調べられる。患部の一部を切断する従来手法に比べて見落としが防げ、病気の進行状況が詳細に分かる。内視鏡検査用の診断・撮影装置として開発を進め、2013年の実用化をめざす。

 厚さ数ミリにわたり患部の内部を撮影する。画像のきめ細かさは約20マイクロ(マイクロは100万分の1)と1個の細胞が映し出せる水準で、画像を見てがん細胞の有無やがん細胞の増殖の様子を確認する。
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2009年09月28日

がん、幹細胞狙い再発防ぐ

 「がん幹細胞」と呼ぶ細胞の研究で成果が相次いでいる。国立がんセンターと協和発酵キリンは白血病のがん幹細胞の構造を解明し、マウスの実験ではこの細胞を特殊な化合物で死滅させることに成功した。東京医科歯科大学も胃がんのがん幹細胞を見つけた。がん幹細胞はがんを引き起こす元凶と考えられ、研究成果はいずれもがんの根治薬の開発につながりそうだ。
 国立がんセンター研究所の北林部長らが発見し構造を解明したのは急性骨髄性白血病のがん幹細胞。急性骨髄性白血病は治療しても再発する場合がある。
 研究チームはこのがん幹細胞を白血病のマウスから取り除き、がん細胞も死滅させることに成功した。がん幹細胞を標的とした治療で一定の効果が確認できたのは初めてという。
 このがん幹細胞は表面に「M-CSFR」というたんぱく質がある。正常なマウスでも、このたんぱく質ができた細胞が体内で増えたマウスはすべて白血病になった。
 研究チームは協和発酵キリンが開発したM-CSFRの働きを防げる化合物を白血病のマウスに注射した。がん幹細胞が死滅した結果、がん細胞もなくなった。治療に使われている抗がん剤を与えたマウスに比べ生存期間は3倍に延びた。
 国立がんセンターの北林部長は「がん幹細胞をたたくことで再発を防ぎ根治につながる」とみている。今後、化合物を改良して治療薬の実現を目指す。
 東京医科歯科大学の深町講師らは、胃がんにもがん幹細胞がることを確認した。患者から採取した腫瘍の一部を免疫機能のほとんどないマウスに移植。マウスにできた腫瘍を取り出し分析した。構造の解明を急ぐ。
 横浜市立大学の谷口教授らは大腸がんのがん幹細胞と考えられる細胞の特徴の研究で成果を上げた。すでに分かっている細胞の目印(たんぱく質)のほかに、正常な腸の上皮細胞の表面にあるたんぱく質も多いことを突き止めた。研究チームは「正常な幹細胞からがん幹細胞が生まれる」とみており、新しい治療法につなげるため、がん幹細胞の働きを抑える方法の検討を始めた。
 成果はいずれも10月1日から横浜市で始まる日本癌学会学術総会で発表する。
2009年9月28日 日本経済新聞
ラベル:幹細胞 がん治療
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2009年09月02日

がんに挑む放射線治療---医療チームの意思疎通をITが支える

日本人の死因の第一位は1981年以来現在、悪性新生物(がん)である。その治療方法の一つが、放射線治療だ。放射線によって、がん細胞の働きを殺し、成長と分裂を阻止する。放射線治療では、医師や看護師のほか放射線治療技師らがチームを組んで患者と向き合っていく。緻密な治療計画管理やチームメンバー間の情報共有を支える仕組みとして、ITの利用が進んでいる。

 放射線治療は、病巣を切除する方法と異なり、組織を残せるため、乳がんや膀胱がんなどでは抗がん剤と組み合わせる温存療法として選ばれている。治療においては、放射線を照射する回数や部位を正確に管理しなければならない。放射線は、継続的に照射することで効果を発揮するからだ。しかし、同じ部位に照射し続けると、副作用が現れることもある。例えば肺がんの治療で、脊椎に悪影響が出るなどだ。

 一般に放射線治療は、(1)治療方針の決定、(2)治療準備、(3)治療、(4)フォローアップ、といった流れで進む。医師が事前の検査などで医療方針を決定し、患者に治療方針を説明し、同意を得る。その後、放射線治療の計画・照射スケジュールを作成したり、正確に病巣に照射するための固定具を作成したりする。治療では複数回の照射の合間に診察し、経過を観察する。治療完了後は、再発がないかをフォローアップする。

■患者の容体などで計画は常に変わる
 しかし、照射計画が緻密なだけに、それを守るのは難しい。例えば、外来患者の場合、「急に都合が悪くなって病院に行けない」ことがあるし、入院患者の場合には「体調が悪くなって治療を受けられない」といったことが起こる。こうしたことが起こるたびに、照射計画は見直さなければならない。変更した計画は、治療にあたる医師や、看護師、実際に放射線を照射する放射線治療技師らで構成するチームの全員が把握しておく必要がある。

 情報伝達・共有の徹底は、放射線治療においては、重要な業務の一つである。元々、診察や治療方針の決定は医師、放射線の照射は専門技師と、その業務が分かれているほか、婦人科や泌尿器科といった各診療科の診察室と放射線治療室は物理的に離れた場所にあるのが一般的である。「固定具を作成しました」「照射を明日に延期します」「予定通りに治療を始めます」といったやり取りは、治療期間中に何度も発生する。にもかかわらず、情報共有手段としては今も、手書きのメモが利用されている。メモの回覧が滞ると、情報が正しく伝わらないというリスクを抱えているわけだ。

■チームのコミュニケーション支援が重要に
 もちろん、放射線治療のための情報システムは構築されている。各診療科の医師が作成した電子カルテを基に、放射線治療の専門医らが、どのように治療を進めていくかの計画を立てたり、治療計画の進捗を管理したりするための仕組みである。このシステム上で、「何日間でどれだけ照射する」といった初期計画がどこまで進んでいるのか、照射を中止により最新の治療スケジュールがどう変更されたのか、などを医療チームの全メンバーが把握する。

 ただ、多くの放射線治療向けの情報システムは、上記のような進捗管理機能が中心である。1990年台前半から放射線治療向けシステムを開発・販売しているAJS(東京都墨田区)によれば、「今後は、医師や技師、看護師らが患者情報を共有するための、コミュニケーション機能が不可欠になるだろう」(関口信一医療システム部担当部長)という。AJSは、旭化成の情報システム子会社として発足し、現在はITホールディングスグループ傘下にある。

 AJSが、放射線治療向けシステム「Dr.View/RTiS」に搭載したコミュニケーション機能では、診療チームの書き込んだコメントを、時系列に沿って一覧表示できるようになった。例えば、7月15日に放射線を照射予定の患者がいる場合、技師が「準備完了」と書き込めば、医師と看護師はそれを画面上で確認できる。

■治療計画決定の経緯を蓄積
 情報のやり取りは口答でも可能だ。だが、院内の業務の合間に伝えたい相手を探して忘れずに伝えるのは簡単ではない。メモを使っても、上述したようなリスクが残る。これを、システム上でのやり取りに変えることで、伝え忘れや実施忘れが減らせることになる。加えて、どんなやり取りをしたかがシステム上に残るため、後から「どういうやり取りの結果、どんな決定をしたのか」が確認できる。

 繁忙な医師やチームメンバーが利用しやすいよう、UI(ユーザーインタフェース)にも工夫した。患者の顔写真を取り込んで画面上部に配置することで、取り違えを防いだり、画面左側にある治療フローにおいて完了したステップには「●」を表示することで、患者の治療計画の進行度合いを直感的に把握できるようにしたり、である。

 放射線治療自体が、ITの進歩による装置の高度化によって成り立っている。しかし、患者と直接に接する治療チームのメンバーのコミュニケーションを支え、治療現場の安全・信頼を高めているのもまたITである。
ラベル:がん治療
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2009年04月24日

健康食品健康被害について

★健康食品被害に厚労省が腰をあげた!
関連記事:健康食品健康被害
我が国におけるがんの補完医療の主流は、アガリクスなどのいわゆる「健康食品」です。「健康食品」については健康被害や薬事法とのからみなど色々な問題がありましたが、ついに厚労省が腰をあげるようです。

★5年生存率ほぼ100%のがんとは?
関連記事:がん
「がん」という病気は、どうしても、「治らない」「治りにくい」という印象が強いのではないでしょうか。しかし、中には、5年生存率がほぼ100%という胃がんもあるのです。
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1滴の血液で癌(がん)治療の評価が可能に

 1滴の血液や微小な組織片に含まれる癌(がん)細胞のわずかな変化を検知する特殊技術を用いて、癌治療の効果が評価できるようになる可能性のあることを、米国の研究グループが報告した。

 「現在、治療を実施した際に患者の腫瘍細胞の中で実際に何が起こっているかはわからない。治療効果を評価する標準的な方法は、数週間待ってから腫瘍が縮小しているかどうかを調べることである。細胞レベルで何が起こっているかを検知できるようになれば、実に大きな前進である」と、筆頭著者である米スタンフォード大学(カリフォルニア州)医学部のAlice Fan博士は述べている。

 著者の1人である同大学准教授のDean Felsher博士によると、この技術では極めて小さなレベルで癌関連蛋白(たんぱく)を分析することが可能であり、ピコグラム(1兆分の1グラム)レベルの蛋白を検知できるほか、蛋白修飾のごくわずかな変化を調べることもできるという。

 蛋白修飾の違いは腫瘍増殖での作用に影響し、癌細胞は蛋白の発現レベルや修飾の程度を変化させることによって、治療を逃れることがある。患者から継続的に微小検体を採取して分析することができれば、治療の効かない腫瘍が発生する前に“不良な(rogue)”細胞を突き止めたり、標準治療の効かない患者を特定したりするのに役立つ可能性がある。

 血液癌の検体でこの技術の有用性が示されているが、固形癌の経過観察にも役立つことが期待されている。今回の研究は、スタンフォード大学と機器を製造したCell Biosciences社のチームが共同して実施したもので、医学誌「Nature Medicine(医学)」4月12日号に掲載された。

原文

[2009年4月13日/HealthDay News]
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(4/23)癌(がん)治療薬の開発を加速する「第0相」試験

 研究に長い期間と労力を費やしても、市販までこぎつけられない癌(がん)治療薬は少なくない。このため、無駄な研究を早期に中止し、優れた薬剤を早く市場に届けるための方法として、いわゆる「第0相(フェーズゼロ)」臨床試験が考案された。

 第0相試験とは、その名が示すとおり「第I相」試験の前に実施されるもの。第I相試験の目的は、薬剤の最適な投与方法および副作用の少ない最大耐用量を突き止めることである。第0相試験では、少数の被験者に低用量の薬剤を7日以内の短期間曝露させ、身体の示す反応や体内での薬剤の作用を調べる。顕著な副作用がなく、意図したとおりの作用が認められれば次の段階に進み、認められなければ、より費用のかさむ開発・試験という次の段階に進まず研究の中止を決断することができる。

 米国立癌研究所(NCI)によると、米国食品医薬品局(FDA)に提出される新しい癌治療薬のうち、認可されるのはわずか5%であるという。その理由の1つは、薬剤に実用性があるのか、副作用が多いのかを早期に予測するシステムが欠如していることだと、NCIのJames H. Doroshow博士は説明している。実際、第II相試験が実施される薬剤のうち70%は有効性が認められず、第III相試験に進むことができないという。

 そこでNCIは、薬剤の開発を加速すべく「NCI実験治療プログラム(NExT)」を創設し、その一部に第0相試験を組み込んだ。初の第0相試験が実施されたのは、DNA損傷の修復に不可欠な酵素を阻害し、化学療法の効果を向上させると考えられている経口薬ABT-888について。研究グループは、研究開始から5カ月で重要なデータを獲得することができ、続く第I相試験のデザインに役立てることができたという。この知見は、医学誌「Journal of Clinical Oncology(臨床腫瘍学)」4月13日号に掲載された。

 第I相試験の20〜25人に対し、第0相試験では10〜12人と被験者数が少なく、また、はるかに少ない用量を限られた回数しか投与されないため、被験者が治療効果を実感することはできないと思われる。参加を促す強い動機付けとなるのは「利他的精神(altruism)」であると専門家は述べている。実験動物になるのを嫌がる人がいる一方で、将来の患者のために科学を進歩させたいと考える人がいるのだという。なお、被験者は第0相試験でも他の試験と同様に血液採取や生検などの侵襲的な処置が含まれる可能性があることも知っておく必要があり、試験に参加する前にマイナス面とプラス面を確認することも必要だという。

原文

[2009年4月17日/HealthDay News]
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2008年11月27日

ビスホスホネートによる顎骨壊死を極初期に拾い上げる

ビスホスホネート製剤(BP製剤)の副作用の一つである、顎骨壊死。これまで早期発見することは困難で、骨露出などの症状が出てからの予後は非常に悪かった。

 しかし、顎骨の露出や壊死の前に顎骨骨髄炎の症状が現われ、その時期に抗菌薬の経口投与を長期間行えば、症状を寛解または治癒できる可能性があるという。静岡県立静岡がんセンター口腔外科部長の大田洋二郎氏が、10月30日〜11月1日に開催された第46回日本癌治療学会総会のポスターセッションで報告した。

 BP製剤は骨粗鬆症や、乳癌、多発性骨髄腫などの治療に用いられている。ここ数年、日本でも副作用として顎骨壊死が起こるという報告が相次ぎ、2006年には該当製剤の添付文書改訂も行われている。だが、その発症機序や臨床経過は詳しく分かっていない。

 大田氏は、BP製剤による顎骨壊死と見られる症例を5例提示しながら、顎骨壊死の臨床経過とともに、抗菌薬による治療の可能性を示した。ここではそのうち2例を紹介する。

 1つ目の症例は、85歳の多発性骨髄腫の患者。2006年7月にBP製剤を投与開始した。翌2007年2月から右下顎歯肉の疼痛を自覚しており、4月に大田氏のもとを紹介受診。そのとき、小さい複数の膿瘍様病変が確認できた。

 そこで、BP製剤を継続したままアモキシシリンを750mg分3、7日間投与を行ったところ、一時的に炎症が軽減し、膿瘍が消失した。だが、6月には膿瘍が再度出現し、下顎骨骨髄炎の診断が下された。そこで7月からクリンダマイシン600mg分4の長期投与を開始したところ、膿瘍は寛解したが、骨の露出は続いている

2つ目の症例は、乳癌由来の多発性骨転移を来した患者。2006年7月からBP製剤で治療を始めたが、翌2007年6月に左上顎の歯肉が発赤。小さい膿瘍が2、3個見付かり、患者も病変部の疼痛と、口の中に苦い味がすることを訴えた。

 7月にアモキシシリンを750mg分3、7日間投与。著効を示し、発赤が消失するも、違和感が残っていたため、10月に同薬1500mg分3の長期投与を開始した。この時期に、BP製剤の投与も休止した。

 当初、炎症は著しく改善したが、症状が改善しなかったために、2008年2月、クリンダマイシン600mg分4の長期投与に変更。6月に下痢のため抗菌薬を中止したが、メトロニダゾール投与で改善した。現在、膿瘍は認められていない。

 この2つの症例で共通するのは、最初に歯肉の部分に小さい膿瘍が2、3個見付かった点だ。「1つ目の症例でここから骨の露出まで進んだことを考えれば、これが顎骨壊死の極初期の症状だといえるだろう」と大田氏。2つ目の症例で、BP製剤を休止した後に抗菌薬で治療することで膿瘍が消失したことから、「極初期から抗菌薬を投与することで、骨露出を食い止められる可能性がある」(同氏)としている。2つ目の症例ではBP製剤の投与再開も考えているという。

 また、ここで紹介しなかった残りの3例(乳癌骨転移2例、多発性骨髄腫1例)も、アモキシシリンの長期投与によって、症状は寛解もしくは完治した。

 BP製剤の副作用としての顎骨壊死は、専門医の間で認知が広がりつつある。だが、「顎骨壊死として掲載されている写真はどれも完全に骨が露出または壊死してしまっているもので、初期の状態を含めた臨床経過は見たことがない」と大田氏は語る。

 今回の顎骨骨髄炎の早期病変の写真を参考に、BP製剤を投与している患者の口腔内をチェックしたり、苦味や口腔内の不快感を聞いてみることが、早期発見の一助になりそうだ。「症例の蓄積や治療法の改良を行うことで、今後、癌患者の増加で増えると見られるBP製剤の副作用を早期発見し、治療に結びつけていきたい」と大田氏は話している。

posted by ダンケルク at 22:51| Comment(0) | TrackBack(0) | がん治療 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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