種子島宇宙センター(鹿児島県)から主力ロケット「H2A」で打ち上げられたあかつきは金星に向かうための予定軌道を正確に飛んでいた。打ち上げ直後に予定していた軌道修正の作業は不要となったほか、地球の画像を撮影する余裕ができるなど「航行は極めて順調だった」(宇宙航空研究開発機構)。しかし、1度しかチャンスのない逆噴射で失敗した。
逆噴射に使ったのは世界初のセラミックを採用した主力エンジン。これまで海外製だったのを悲願の国産品に切り替えた矢先の出来事だった。今回の逆噴射の前に実施したテストでは正常に稼働していた。それが、逆噴射の途中にコマのように回る緊急状態の「セーフホールドモード」に何らかの原因で切り替わってしまった。
セーフホールドモードは、太陽光パネルを太陽の方向に向けて電源を確保する動き。小惑星「イトカワ」から物質を持ち帰る世界初の成果をなし遂げた小惑星探査機「はやぶさ」も通信不能となった時、このモードに切り替わっており、その後復帰した経緯がある。宇宙機構にはこうした局面を打開する運用ノウハウがあったはずだが、あかつきの軌道は修正できなかった。
宇宙機構は8日、宇宙科学研究所所長をトップとする調査・対策チームを設置。文部科学省の宇宙開発委員会も調査に乗り出す見通し。
あかつきは現在、太陽の周りを回る軌道に入っており、2016年12月から17年1月ごろに再び金星に接近する。宇宙機構は電力消費を減らすなど機器の延命に努め、金星の軌道への再投入を目指す考えだ。